蝶のように待って、蝶のように去る

 蜂がいるとびっくりする。

 

 

 洗濯物を干す為にベランダに出ようとすると、蜂がベランダで横たわっている。かなりの強面。

 

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生きているか死んでるか分からないので迂闊に刺激することもできない。とりあえず5分間見守って逃げるのを待ったが、蜂は微動だにしない。困った困った困った困った。蜂は怖いから。動くかどうかだけでも確認しよう。

 

 まずはピザ屋のチラシを丸めてドアの隙間から蜂に向かって投げてみる。遠隔攻撃。俺が米軍であいつがビンラディン。国防。国防柚乃。直撃はしなかったものの、蜂はやや動揺して羽根をブンブン鳴らした。もう一発だ!と意気込み、今度は県知事選のチラシを丸める。村井氏、長氏、君達を特攻隊に任命する。これは大変名誉なことだ。あの蜂に突っ込み、全てを破壊するのだ。いけーーー!!!!!

 

うおおおおお!!!!!

直撃だああああああああああ!!!!!

 

 

 狼狽える蜂!つまり蜂狽。確実に効いてはいる。このまま飛び立ってくれれば....

と考えたが世の中そんなに甘くない。

 

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少し体勢を変えた蜂は何事もなかったかのように「そんなもんか?舐められたもんだな」と、こちらを挑発してくる目つきで睨んでくる。気がする。くそう、村井・長、君達のことは一生忘れない。県知事なんてならなくても歴史に名は刻まれたよ。洗濯カゴの中から痺れを切らせた靴下が飛び出してくる。奴らを戦地に行かせるわけにはいかない、早くケリをつけなくては。

 

 僕はゴキジェットを手に取った。旧ソ連が開発した人類最終兵器。もう後には引けない。北斗の拳のような世界になったとしても僕はこれで蜂を殺さなければならないのだ。

 勇気を持って網戸越しに勢いよく噴射した光線は蜂を包み込む。ベランダをのたうち回る蜂、それでも僕は間髪入れずにどんどんジェットしていく。蜂は羽根で激しい低音を響かせながらベランダサンダルによじ登り、隠れる場所を探そうとしている。

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くくく(←「く」はポテチ2枚を口に挟んでる人っぽく見える)、無駄なあがきを。人間を舐めるなよ、私は指一本触れずにお前をやっつける!キェーーーイ!

 そして蜂はサンダルの上でしばらく暴れた後、利き手じゃない方の手で書いた線のようにふらふらと飛び立っていった。まるで蝶だった。

 

終戦

 

戦いの痕跡が残るベランダに洗濯物を干す。あー、無駄な犠牲者を出すぐらいなら最初からゴキジェット使えば良かった。軍備増強(補充)せねば。

 

みなさん蜂には気をつけましょう、蜂は怖いから。

  

あと選挙には行きましょう、行った後の食事はピザなんてどうでしょうか。是非チラシをご覧ください、丸める前に。