洗濯機で溺れるわかめの走馬灯

 今朝洗濯物干そうとしてたら靴下にわかめがついてた。まさか洗濯機で戻されるとはわかめも思ってなかっただろう。大丈夫、家主も同じだよ。

 

「海見たいとか本当に言わないで ほら、洗濯機から波の音」

 

春ぐらいにつくった短歌。「海見たい」と思った自分の気持ちへの照れと、部屋にいる時間が多くなったおかげで身近な家電にも違う価値を見出せるんだって気づいた時に思い付いた。

 洗濯槽の中でかきまぜられる水は、まるで波打ち際のような音がする。目を閉じてしまえばそこは自分だけにしか波の音が聞こえない海のようなものだ。ガタガタ音に耳がいきがちだが実際はあのちゃぷちゃぷ音がメインだと思う。ドラム式洗濯機にしたらどうするんだろう、ずっと見てられるだろうな。

 

 

 音楽やラジオを聴く為にイヤホンをかなりの時間使用しているが、外してみると違う音を楽しむことができる。特に声。すれ違う人が喋る僅か1秒、1行の言葉だけでも想像力を掻き立てられる。

 

こないだ横断歩道を渡りながらすれちがった四歳ぐらいの女の子は

「じゃあ今度から怒りん坊さんって呼ばないとだねー」

と言っていた。あの子の周りで明日から怒りん坊さんと呼ばれる人がいる。どんだけ怒ったんだろう。もう翌日には怒りがおさまっていたとしても、女の子が怒りん坊さんと呼べば怒りん坊さんなのだ。おこりんぼうさん。案外可愛い。今度から何かにイライラしてる人を見たらおこりんぼうさんって呼んであげよう。でも怒られないか心配だ。

 

 自転車に乗った男女二人組とすれ違った時の会話も覚えてる。

地味目なメガネの男の子が「その後また実習あってー」と、下り坂にも関わらず色々話しかけているのに対し、隣の女の子は「ふーん」と適当な相槌。きっとバイト帰りの大学生だろう、特別仲が良いわけでもないがたまたま帰る方向同じでシフト被った時は一緒に帰るから何か話さなくちゃいけない。でも共通の話題を探るのは遠慮してしまい、お互いの大学のこととか当たり障りのいない会話で場をつなぐ。くぅ〜〜〜〜。あったあった、バイト終わりの駐輪場までの短いどうでもいい会話。何の授業の課題が大変だとか、土日入ってるかだとか。実習がある理系とか看護系のやつはいつも実習というワードを口にしていた。何をしてるかは何回聞いてもよく分からなかった。もっと話しとくんだったなあバイト先の人。帰る方向が違くて自転車乗ってからは1人のことが多かったけど、途中まで方向同じだった後輩ちゃんとはたまーに一緒に帰った。結局トイストーリーでどれが1番泣けるかコンビニの端っこで議論したのはつい1年程前だ。

 

 

あとさっきスーパー行った時にはオールドスタイルのギャルが

「この世の食べ物ん中で1番好き、もやし」

と言っていた。なんて美しいギャル倒置法。あーしももやし好き。

 

 

気分がいいならイヤホンは無し。

 

 

作品やコンテンツ以外にも見るべきもの、聞くべきもの、感じるべきものがある。

それを少しでも多く見つけられたらもっと現実を好きになれると思う。

 

 

 

ってさっきすれ違った猫が言ってたニャー。